連作「五月雨と共に語る言葉」


「ジレンマ」

声を出すことは一つのゴマカシで
喋ることは見栄で
そこには常に何かがあるのです

本当は黙ってそばにいたいのです
ただそれだけなのに
黙ってるのは中々
難しい



「黒い雨」

私の中には黒い雨が降っています
やむことのない黒い雨が
いつか覆いつくすでしょう
私の中の歪んだ心と身体を
いつか

支えきれない
この身体
そのため溶かす
黒い雨

しかし蝕まれる身体
とても見れたものではなく

そんな私を
どうか
見ないでください

そしてどうか
光を
与えてください

太陽よ



「透明人間」

空気が見えることがあるのを知っているかい
透明人間の見せる幻だ

暑い日には蜃気楼が見えるだろう
寒い日には白い影が見えるだろう

こんな雨の日には
耳をすませてみろ
ほら
奴らの足音が聞こえる



「お気に入り」

6月の雨は嫌い
ジメジメしていつまで経ってもやまないから
9月の雨も嫌い
時々ヒリヒリ 寒いことがある

でも雨は好き
冷たい空の涙
降る前の静けさ

きっとこんな雨のこと



「宙毒」

上を向いて口を空ける
あーん
1滴 2滴 3滴
口の中にも瞳の端にも降りかかる
ポツ ポツ ポツ

私は雨に毒されている



「回帰」

差し上げるものは何もありません
私は私の身一つで
それいがいに何も持たず
何も望まずここにあります

ただ穏やかに
今生きていることを幸福に思っているので

望むとすればただ一つ
ここではない

彼方への憧れ

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