特別なものはいらなかった。
ただ一緒にいたかった。
それだけが全てだった。


treasure in my life


きっかけは確か、いつもと同じ。
シロとリカちゃんが喋ってて、いつの間にか花火の話になった。
当然、クロがやってみたいって言い出した。。

「はあ?今何月だと思ってんのよ!冬よ冬!!」
思ってもみないことを言われて怒り出すのはリカちゃん。
「なんだよ、『花火』ってのは冬にやっちゃいけねえのかよ!」
クロが叱られるとすぐに言い返すのはシロ。
売り言葉に買い言葉、いっつも二人は喧嘩する。これが私たちのイツモ。



「・・・五月蝿いな。」
さすがにあたしの膝で眠ってたオロロンも目を覚ました。
「おはよう。」
昼過ぎだったけど、あたしがそう言って微笑うと、オロロンも笑ってあたしの顔に
触れる。オロロンが触ったとこがくすぐったくて、首をかしげたら、オロロンはそのまま
あたしの顎を引いてあたしに唇を重ねた。
びっくりしたけど、なんだか嬉しくてもう一度、今度は二人で笑う。
「何の騒ぎ・・?」
「クロが花火がしたいって。」
「花火・・・?すればいいじゃないか。」
「でも冬だしってリカちゃんが・・」
「できるだろう、火がつけばいいんじゃないのかい?アレは・・・」
オロロンの一言で喧嘩は止まって、リカちゃんも「まあ、そうね」って言って。
それで決まりだった。買いに行くと、リカちゃんとシロが家を出る。売ってるのかな
とは思ったけれど、その時はもうクロが扉を閉めた後だった。

まあ、いっかと思ってあたしは顔をオロロンの方に戻す。
オロロンは笑っていた。男の人だけど、とてもキレイで、花みたいだった。
「どうしたの?」
「ううん、千秋は可愛いなあと思って。」
オロロンはいつもそんなことを言う。
あたしはいらない娘じゃないんだって安心する。
涙が出そうになる。
「どうした、千秋?」
今度はオロロンがあたしに尋ねる。
あたしは笑う。
「何でもないよ。」
すると、あたしの膝の上のオロロンは急に身体を起こし、あたしを抱きしめた。
「どうしたの、オロロン。」
びっくりして、だけどすごく嬉しくてあたしは尋ねる。
「ここにいるよ、ずっと千秋と一緒にいるから・・」

(泣かないで)
(ずっと生きていこう)

涙が出た。止まらなかった。
ここにあるもの。ずっと欲しかったもの。
「一緒にいてね。ずっとだよ。」
「もちろん。」
あたしは笑う。

これがあたしの宝物。
ずっと欲しかった家族。
ずっと欲しかった抱きしめてくれる人。
ずっと欲しかった愛してくれる人。

その後も、オロロンはあたしを抱きしめて放さなかった。
「オロロン・・・もう、リカちゃんたち帰ってくるよ。」
「うん?いいよ、こうしていよう。」
照れくさかったけど、オロロンの腕の中が本当に気持ちが良くて、
あたしも頷いてオロロンの身体に腕を回した。

あたしたちはリカちゃんたちが帰ってきて、オロロンの頭を殴るまで、
そのまま気付かないでそうしていた。


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