ELECTRIC LIFE


1.運命の電撃

「あ」
「痛っ」
 ほぼ同時。指先と指先が触れ合った瞬間。

 人と人とのつながりで
 ビリビリビリ
 ほら
 こーゆーのが運命って言うんじゃないかな




2.無責任なナルシーの充電

 自分の手足に時々ひどく違和感を感じることがある。歩くときに足を動かそうと意識する人などいるだろうか。普通、そこには何も無い。しかし僕には「何か」ある。例えば、ふと気づくと自分が何故そこを歩いているのか気づかなかったり、誰かに触れられてひどく驚いたりする。
 そういえば、昨日も何故か他人と「触れた」。指先と指先が触れ、そして電気が走った。
E・Tじゃあるまいしと、いぶかしんで相手と指先を交互に睨むと指の先には僕のプリントがあって、相手にはゴメンナサイと謝られてしまった。
 完全に悪いのは僕だ。よく知らない人よ!君は何も悪くないのに!!

 僕は自分で言うのも変な話だが、自分の責任を物に当たる。当たると言っても、特に投げつけるとかそういうことではなくて、自己嫌悪の一環の行為なので、痛い目を見るのは自分だったりする。
 何もない僕の部屋に寝転んで、それはまあ、要は不貞寝なわけだけど、目に付いたのが今時、どこの部屋の隅にでもある2つの穴。
 当初はそこを見つめるだけだった。だんだん見つめすぎて、穴が開く…いや、もう開いてるわけだけだから、穴が大きくなるのか、ってぐらい見つめて。
 そして触れてみた。
 ビリッ
 最初のは完全に偶然。
 だって、ほんとに触れてみただけだから。コンセントに触って一々感電してたら、身が持たないだろう。
 だからそれは1種の儀式のようなもので。

 最近は必要のないコードで自分とその穴を繋ぐ。
 僕は自分で自分を充電する。



3.思い込みチャンネル
 
「そう、その時すごいビリビリっていって!」
「静電気だろうねぇ」
「相手も物凄い私のことを見つめてきたのね!」
「痛くて思わず、睨んだんじゃ…」
「ああ、これはもう運命だなって!」
「ごちそうさま」

 気持ちっていうのがどういう流れで動くものなのかが良く分からない。
 そう言えば、幼い頃から「○○君は●●ちゃんが好きー」とか「誰にチョコレートあげる?」って話題に乗り切れていない自分がいた気がするのは確か。どっちかって言うと、チョコレートはあげるより貰う方が良いと思うんだ。これは全世界共通の性別とその嗜好の問題として、一度提訴したいくらい。
 自分に恋人がいるって妄想より、自分が明日、地球のヒーローになるって空想のがまだ面白いと思ってるようでは、たぶん社会に適合しない烙印を押されるってことが分かる程度には社会性があって。
 だからって社会のためにコンパに行こうとも思わないし。
 
 気持ちが先走ること。
 どんな感じ?
 身体が動くこと。
 どんな感じ?

 自分の中にきっと何かがいる。
 そんな感じ。

 それは形のないもの。
 でも、
 確かにあるもの。

 


4.ノーマルライフ

 自分の後ろから吹き抜ける風を感じる
 びゅうっと突き抜ける
 私の身体を
 それは 刺されているようなもので
 私は
 誰かに 刺されたと思うのだ
 しかし 振り向くとそこには誰もいなくて
 感じられるのは かすかな塩の香りと 車と廃棄ガスの匂い
 ああ
 私は
 この街で生きていける
 そう感じた

 その時には分かってなかった。その後の運命の電気ショック。
 ビリビリと。
 心を焦がす電撃。
 風や塩の香りなど吹き飛ばす、強い力。

 


5.エキセントリック・ライン

 すべてが平均点
 それってすごいことで
 すべてのパーツが普通
 それってものすごく非凡なことで
 普通は誰しもどこかしら
 飛び出しているものだから

 ノーマルとアブノーマルの境界線を僕に求められてもほとほと困る。
 見えるもの
 見えないもの
 この世にあるもの そのどちらも僕は愛す

 僕たちはいつもつながってる
 でもそれは誰にも見えなくて
 だから時々 不安になる
 知らないうちに 切れてしまわないだろうか
 いつまでも いつまでも
 つながっていられるだろうか

 自分たちほど 信用のならない 生き物はいない


 ビリビリビリ・・・

 今日も僕らは電子で結ばれている






書いた後の祭り。
NOISEに寄稿した作品。テーマは「電化製品」でした。
始めは電気コードで身体を痛めつけるSM恋愛小説にするはずだった(え?)のを
いつもどおり、締め切りのせいでまいた結果がこの作品。
代わりに電波系ストーカートライアングルラブコメになったと思ってます。
詩だと思う方が多いみたいなんですけど、れっきとしたストーリー物です。
突発の割には気に入ってます。
書く予定だった恋愛ものはそのうち

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